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「ふつう」へのコンプレックスに悩んだら、槇ようこ×持田あきの共作漫画『ピカ☆イチ』で根性を叩き直せ!

今、この記事を読んでくれているあなたは、自分のことを「ふつう」だと自信を持って言えますか?

このサイトの開設にあたって、いちばんに悩んだのはコンセプトの部分。
「マイノリティー」に苦しむ人たちのネットワークをつくりたい。だけど、それを全面的に押し出したらきっと、なんだか「それ以外の人」はまるで関係のないように見えてしまう。

そこで考えたのは、「ふつう」への考えを見直してみることでした。だって、なにを以って「少数派」と「多数派」になんて分けられるんでしょうね?

わたしの人生はずっと、「ふつうになれなかった」ことへのコンプレックスでできていました。
だけど、だからこそ、知らなかったんです。世の中にはその逆で、あまりにも「ふつう」で悩む人たちも存在することに。

今回紹介する『ピカ☆イチ』は、そんなありきたりすぎる自分と理想へのジレンマに悩む主人公たちのお話です。

ひより
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このサイトの記事は、基本的にネタバレありきで展開しています。
ネタバレNG派の人は薄目でタイトルだけチェックしてね!

実の姉妹コンビ!原作・持田あき×作画・槇ようこの最強コラボ

『ピカ☆イチ』は、ふたりの漫画家による共作といった、少女漫画にしてはちょっとめずらしい作品です。

作画を担当するのは、雑誌『りぼん』の看板作家のひとりとして長きにわたって活躍してきた漫画家の槙ようこ
アニメ化にもなった『愛してるぜベイベ★★』にはじまり、すこし特殊な環境にある家族の背景を描くのが得意な作家さんです。
デビュー20周年の今年(2020年)春をもって引退することが発表され、平成初期生まれのりぼんっ子は悲鳴をあげたのではないでしょうか…!

ストーリー構成は、同じく『りぼん』作家でもある持田あき。実は、槙ようこ先生と血の繋がった実の妹なんだそうです。当時そのことを知った際は、「姉妹でりぼん作家だなんて!」ととてもびっくりしたのを覚えています。
最近では、深キョン主演でドラマ化もした『初めて恋をした日に読む話』でその存在を知ったかたも多いのでは?

作家としてのおふたりに共通するのは、ただのラブストーリーではない繊細な感情を表現するのがお上手なことだと思っています。あと、主人公だけではなく登場人物全員のキャラがいきいきして見えること!

つまり、そんな最強タッグで作られた作品が「ただのふつうに悩む人」のお話で終わるはずがなかったんですよね…!

高校生にして、まさかの「任侠好き」!?主人公ふたりの意外な共通点!

漫画『ピカ☆イチ』には、作家だけでなく主人公もふたり存在します。

ひとりめは憧れの「私立愛種高校」に入学したばかりの16歳、鈴木花子
特に得意科目があるわけでもなく、リレーは「トップでもアンカーでもない」。生まれてこのかた、あだ名があったこともなく目立たない存在。
花の女子高生なはずなのに、自己評価は「私の人生、相当普通」とあまりの低さです。

ふたりめは、そんな花子と同じ名字である鈴木太郎です。
「普通すぎる名前だと普通すぎるオーラが出る」「部活の花形サッカー部にいてもパスをもらったことがない」と、自分の空気のような存在感に悩んでいます。

鈴木太郎・花子コンビの共通点❶ふつうすぎること

ふつうすぎる自分に「これでいいのか」と日常にフラストレーションを抱えていたふたり。しかし、愛種高校のとある秘密を知ってしまい、その生活が一変していくことから物語はスタートします。

それは、定期的に勉強の「ストレス解消」と称した集団リンチが行われていること。
都内でもトップクラスの成績優秀者が集まるこの高校では、試験で最下位を取ると見せしめにイジメの対象となってしまうのでした。

そして、裏でそのルールの糸をひいていたのは、学園の理事長夫妻の息子である道玄直治

メガネで黒髪、地味で目立たない存在だったはずのふたりは、そんな現実に立ち向かうためにまず自分の見た目を変えます。
髪を金髪に染めてスカジャンを羽織り、「なんだあの格好、ふつうじゃねぇ…」と生徒たちからささやかれるのでした。

ひより
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かりそめのトップ・道玄と理事長夫婦の親子関係にも注目!
道玄がそんな行動をとっているのワケは、両親からの「偏執的な愛情」が関わってくるんです…!

鈴木太郎・花子コンビの共通点❷大好きな任侠映画にそっくりな校訓に惚れ込んで入学!

実は、入学前にふたりが愛種高校への受験を決めた理由もまったく同じものでした。

その決め手はなんと、愛種高校の3つの校訓。「全国探してもこんな素敵なことを言っている学校はなかった!!」「後世に残る名句だ!!」と興奮するくらいに入れ込んでいます。

なぜなら、それはふたりがもっとも影響を受けた任侠作品に出てくる組の掟にそっくりだったから。

愛種高校の校訓→任侠映画『道・極め』の組の掟

  1. 常に人のために→私闘を禁ず
  2. 友を大切にする→結束は親兄弟より固いものとする
  3. 正々堂々とする→警察にたれこまない

「この高校に入れば、きっとあの映画に出てくるような素敵な人になれる」と希望を持って入ったはずの高校は、あまりにも自分たちの理想とはかけはなれていました。
彼らが思い切って自分を目立つ外見に変えたのは、そんな憧れが原動力だったのです。

ひより
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漫画のなかには、ふたりのお気に入りの映画『道・極め』のシーンも出てきます。
なかでも、わたしのお気に入りのセリフはこれです!

「あんたが毎日やっていること、思っていること。他人からみたらどんなに平凡でも、あんたの中にはちゃんと意味があるんだろう?
だれだって”自分にとっての普通”を基準に生きてんだ」
「普通普通ってだれと比べてだ?正しいと思うことをやって間違ってることは認めない。それを正義って言うんだろう?」

(『ピカ☆イチ』1巻より)

わたしがずっと、「変わり者」と呼ばれることに苦しんでいる一方で、「ふつう」であることにコンプレックスを抱える人もいる。
たしかに、みんなが自分にとっての当たり前を生きていることに気づいたら、これまでは考えもしなかった価値観も理解できそうな気がしてきますよね。

「理想」こそが自分の首をしめる。道玄親子が望んだ「愛種高校らしさ」とは?

この物語の鍵をにぎるのが、イジメの首謀者でもある道玄直治。理事長夫妻の息子であるため、学内での事実上の権力者として周囲から一目置かれる存在です。

彼がゆがんだルールとともに学校を変えてしまったワケは、両親の「理想」にあります。
もともとはこの学校のことをだれよりも考えているような熱心な教師だった直治の母親。しかし、理事長である夫との結婚後は代々受け継がれる学園への伝統と責任へのプレッシャーに押しつぶされていきます。

そんな「ふさわしさ」や「こうあるべき」という理想のために、親としての力を利用して直治を縛りつけるのでした。

ひより
ひより
今までずっと無視してたくせにお姉ちゃんがいなくなったとたんに手のひら返したり、手錠かけたり、監禁して「幼稚園児からやり直す」ごっこさせたりする母親のトチ狂いっぷり

人から見た評価や、体裁にとらわれすぎると、自分の本当にやりたかったことをだんだんと見失ってしまいます。
一度は縁を切ることも考えた彼ですが、これまでとは違ったやり方で学園と家族に向き合っていくことを決めます。

そして、母親は「(姉弟)ふたりが交代で長いこと私の勝手な理想につきあってくれた」と気づくのです。

理想よりも、自分の正義を。漫画『ピカ☆イチ』から学ぶ自分のあり方

わたしたちの頭を時おり悩ませてしまう「ふつう」の基準は、他人との比較から生まれてしまうもの。
だけど、他人と関わるからこそ「自分」という存在が浮き上がってくるのも真実です。

「ふつう」も「ふつうじゃない」ことも、他人が勝手に決めてしまった評価なのです。
本当はふつうなんてどこにもなくて、その人なりの「正義」や「だれかの期待に応えたい」気持ちが自分を形作っていくのでしょう。

この作品では、たくさんの登場人物の言葉のなかからそんな自分らしくあるための方法を教えてもらうことができます。
だれかが決めた価値観にまどわされないような勇気をもらいたいときに読んでみてくださいね!

「初めて知った 気を許せる仲間や信頼できる場所があるって本当に強くなれるんだ」(1巻より)

「自分の好きなものを胸を張って好きって言えるだけで人は本当に強くなれる」(5巻より)

「家族もあんなに傷つけあってもやっぱりん捨てられない絆があって お互いにそれに気づけたらいつまでたっても遅くはないんだ
(6巻より)

「なにが正しいのか、答えは人の数だけあるでしょう。けれど間違いに気づいたとき、他の誰でもない自分の力で止まることで人は大きく成長できるのだと思います」(7巻より)

ひより
ひより
6巻のオマケ漫画には、私の大大大好きなaikoさんのライブ「LOVE LIKE ALOHA」のエピソードもでてきて大大大歓喜!
aikoファンはぜひチェックしてみてください!!!

あと、この作品は漫画でありながら、まるでドラマ『ごくせん』や『花より男子』のようなドタバタ劇のストーリー展開なのが特徴です。
少女漫画の実写化が相次いでいることだし、やってくれないかなあ…。(鈴木太郎は七三メガネも学ランも似合いそうな横浜流星くんで…!)

ちなみに、タイトルの由来はおそらく嵐主演の『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』ですね。
嵐にはめずらしくワイルドな世界観のこの主題歌を聞きながら読んでみても面白いかもしれません!

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